バウハウス復刻フォントにやられた話

バウハウス復刻フォントにやられた話

2018年6月13日

Adobeが伝説の美術学校「バウハウス」の失われたフォントを復刻し、Adobe Creative Cloudのメンバーに無償配布しました。ダウンロードページ
バウハウス」と聞いてピンとくる人は、建築やデザインの世界に通じている人ではないでしょうか。
建築を勉強していた学生時代、授業でこの名前を知りました。

簡単に説明すると、1919年から1933年の間ドイツで設立された、写真・美術・工芸・建築と総合的なデザインの教育を行う美術学校です。
歴史は短いバウハウスですが、機能主義・合理主義のデザインを突き詰めた教育は現代まで大きな影響を及んでいます。

バウハウスとは

初代校長はヴァルター・グロピウスというドイツ人建築家で、ル・コルビュジェ、フランク・ロイド・ライト、ミース・ファン・デル・ローエと並ぶ世界四大巨匠と称される建築家です。
ル・コルビュジェは誰でも一度は聞いたことあるのではないでしょうか。最近はコルビュジェの作品が世界遺産に登録されつつあり、日本でも国立西洋美術館が世界遺産登録されましたね。
ミース・ファン・デル・ローエも後にバウハウスの校長を務めています。ミースが残した「Less is more.(より少ないことは、より豊かなこと)」や、「God is in the detail.(神は細部に宿る)」といった標語は、現代のミニマリズムの根底にもなっている考え方です。
音楽でいうバッハ、ベートーヴェン、モーツァルトのような感じと言うとすごさが伝わるでしょうか。
そんな近代建築の流れを作り上げてきた巨匠が立ち上げたと言うことに加え、14年間で歴史を閉じたという事が、より伝説感を演出していますね。

失われた5つのアルファベットを復元

バウハウスは建築だけでなくあらゆるデザインの分野で功績を残しており、フォントもその一つにあります。有名なものだと、macに標準搭載されている「Futura」というフォント。「LOUIS VUITTON」などの超有名ブランドのロゴにも使用されるフォントです。

adobeが今回発表したのが、バウハウスの当時のスケッチや未発表の手紙の断片などから5つのフォントの復刻したというニュース。しかもそれを無償で公開するというから驚き。
順次公開されいくとのことで、現在は2種類のフォントが公開されました。もちろん音速でダウンロード。

「Joschmi」「Xants」という2種類です。
バウハウスの機能主義を色濃く受け継いでおり、直線と円弧を組み合わせたシンプルな作りながらも、それぞれで全く違う個性を作り上げています。

Joschmi

スリットが印象的で太めのフォント。第一印象はコーヒー豆みたいで可愛い、なんてしょうもないことを思ってしまいました。

文字の構成要素は、太い直線・円弧・正円・余白のみ。どこかで見たことありそうで見たことないということが、シンプルで洗練されたデザインであるということだと思います。
ロゴやアイキャッチみたいなワンポイントに使うとインパクトありそう。
丸みと太さで構成しスリットで統一感を出す感じが、一文字ずつ単体で完成された印象を持ちました。

Xants

これは美しい。スーパー美しい。「Joschmi」とは打って変わって細身なフォントです。「Joschmi」が単体で完成された印象なのに対し、「Xants」は文字列で見たときの美しさにうっとりします。メリハリの聞いた直線を微妙な隙間で繋いでいます。
「Joschmi」のスリットほど主張はありませんが、関節のようにひっそりと、しかししっかりとデザインを作っています。
さらにアクセントで効いているのが「●」です。

おそらくここが、他のフォントとの一番の違いだと思います。

線で作られる文字の中に、ちょこちょことボールが浮いているような可愛らしさとリズムがあります。個人的には小文字のkに「●」が使われていることが最高に好みです。このkのデザインが気に入りすぎて、このkeeclipのタイトルロゴに使いたいという気持ちが溢れました。

タイトルに使ってみた。

可愛美しい。
やはり並びで見たときのなんとも言えない美しさがあります。

「k」「c」「i」の●がいい感じに散りばめられていて、シンプルなデザインの中の遊び心に興奮してしまいました。
タイピングしていてこの文字列が出てきたときにはもうロゴを更新することを決めていました。
前のフォントもわりと時間をかけて選びましたが、気に入ったものが見つかると我慢はできないものですね。

ちなみに以前のフォントは「はんなり明朝」という、明朝体をベースにした上品で落ち着いた雰囲気の日本語フォントでした。


このフォントも学生の頃からすごく好きで、ポートフォリオの文章なんかに使っていました。僕の設計作品は、緊張感のあるスタイリッシュな建築というより、落ち着いた人の振る舞いに重きを置いた設計だったので、それに合わせてよく使っていたフォントです。

まとめ

フォントについて、という中々ニッチな記事になりましたが、今回配布されたフォントはほんとに素晴らしいものなので、creative cloudに加入している人はダウンロード必須です。ダウンロードページ

読んでいただいた方に、僕の興奮が少しでも伝わると幸いです。