今回は設計課題に悩む建築学生に向けての内容になります。ただ特殊なことではないので、あらゆるクリエイターに共通して応用できることかなと思います。

ちょっと前にtwitterで403architecture[dajiba]の辻さん(@tsujitakuma)がこんなツイートをしていました。

設計のエスキスに情報カードを使う。

以前ご紹介した、5×3の情報カードですね。

この情報カードの使い方、かなり正統な使い方だと思います。

設計初期段階のエスキスでは、いかにたくさんのアイデアを出してポンチ絵を描いて、それを比較したり選別したりして昇華させていけるかが、大切だと思っています。

ほとんどの学生が、エスキス帳と呼んでいるスケッチブックやノートでエスキスをしているのではないでしょうか?何ページにも渡って書いたエスキス帳を、先生とのエスキスチェックの前に慌ててコピー機に走る。学生時代を思い出します。

もちろん色々と方向性が固まったり、大きめの絵を描きたい時は、ある程度のサイズの用紙があった方がいいのですが、設計1周目2周目くらいの、案出し段階ではむしろ小さい情報カード方が、エスキスに向いていると思います。

情報カードが向いている理由は3つあります。

描きすぎない

1つ出したアイデアを決め打ちして突き進んだ結果、設計が行き詰まった経験がありませんか?

最初に降ってきたアイデアに拘るのも大切ですが、コンセプトに拘ったとしてもそれを表現するカタチは無限にあります。

そのカタチをエスキスするのに、A4の紙だと少し大きすぎるかな、というのが僕の印象です。初めはダイヤグラム的なポンチ絵を描き並べて行くかと思いますが、紙が大きいと絵も大きくなったり変に書き込んだりしちゃうんですよね。

情報カード1枚にちょっとした絵を1つ描くくらいの方が、案出しのテンポがよくなります。1枚に1つと、制限をつけることで1つのアイデアに固執して描きすぎずに数を増やす助けをしてくれます。

時間をかけて考えた案が、自分の中ではベストと思ってエスキスチェックに臨んだら、担当の先生がスケッチブックの端の方に描いた落書きみたいなポンチ絵を見て「こっちの方がいいじゃん!」なんていう光景はざらにあります。

設計をよく知る先生や先輩ほど、簡単な絵をたくさん描きますし、それを読み取る能力にも長けています。

並べられる

東京藝大のエスキスチェックの様子が藤村龍至先生のtwitter(@ryuji_fujimura)でよく流れます。たくさんの模型と紙が、机や壁に並んでエスキスをしている様子が伺えますね。

いつもプレゼンを意識してパネルや模型の前で話す練習も兼ねているのだと勝手に解釈しています。

それをバリバリの建築家に対して常に行うのですから、少数精鋭の藝大で優秀な建築家を生み出すメソッドの1つなんだと思います。

他の大学だと、そこまでの潤沢なエスキスチェックって中々ないですよね。実際は学生がそれだけのものを持ってきたら先生は答えてくれると思いますが、この記事を見る学生さんは、それが難しいから悩んでるわけですよね。

しかし、情報カードに書いたポンチ絵を机の上に並べることで、彼らのようなエスキスチェックと本質的に似たようなことができると思います。

小さなカードサイズなので、グルーピングしたり並び替えたりする事が簡単にできますし、A3やA4の用紙を壁一面に貼るよりはハードルが低そうに思えませんか?

先生にウケる→実務にも活きる

建築の先生は、ちょっと変わった学生が好きです。みんながスケッチブックでエスキスをするところで、別の方法でエスキスチェックに臨んだら「おっ!」と思わせられます。

加えてスタディ模型も初めはごくごく小さいものでいいと思います。それこそ情報カードに乗せられるくらいの。模型とカードを同列に机一杯に並べきると、先生は確実に盛り上がりますよね。

エスキスチェックで先生を盛り上げて味方につけると、アイデアがどんどん発展していき、最終的に講評会でも味方ポジションで語ってくれたりします。

設計課題のエスキスチェックとは、とどのつまり施主との打ち合わせのようなものです。

先生のアドバイスが実務では施主からの要望に置きかわります。色々なアイデアを出して気に入られた案を発展させる。根底では同じようなものですから、エスキスチェックが上手くなった学生は、実務においても施主へのプレゼンで力を発揮できます。

まとめ

僕の大学の恩師が「一計百案」という言葉を常々おっしゃていました。

子ども建築の大家、仙田満先生から継いだ言葉だそうです。1のゴールに向けて、100のアイデアを出しなさいということですね。

設計が上手い学生は、アイデアの大小合わせるとそのくらい考えているんじゃないでしょうか。なんの気もなく適当に描いてみた絵や模型が、案外いいじゃん!って事がデザインの世界ではよくありますし、それを数こなす事が大切です。

すごいラフな巨匠スケッチってよく見るじゃないですか、ああいうラフで小さい絵をはじめのうちは量産しましょう。

玉石混合の絵の中から、先生に伸びそうなものを発掘してもらえば良いのです。そんな経験を積んで行けば、自ずと発展しそうなアイデアの選別が自分でもできるようになります。

設計課題がうまくいかないと悩んでいる学生は、情報カードを机いっぱいに並べてエスキスしてみてください。スタートダッシュが全然違うと思います。1つのアイデアに固執せず、いろんな可能性を考えてみましょう。それをやりやすくしてくれるのが情報カードだよ、というお話でした。
…学生時代に気づきたかったなあ。