これまで小上がりから始まり、本棚やテーブルなど色々なものをDIYで作ってきましたが、唯一作ってきていなかったものがありました。それは「イス」。ダイニングチェアもネットで購入したリプロダクト製品を使ってきました。
なんで今までイスに手を出さなかったかというと、木工DIYで作るにはハードルが高いから。
イスというのは、まず第一に強度がしっかりしていることが大前提。4本の脚・座面・背もたれと割とシンプルな構成でできそうですが、シンプル故に強度を保つのに工夫が必要です。しかし頑丈にしようと気を使いすぎると、重くなってしまったり見た目がインテリアに合わせづらくなってしまったりなりがち。
加えて長く座るイスならば、座面の高さや大きさ・背もたれの角度と細かい寸法が座り心地に直結するので、精度良く加工できる作り方も必要。
そんなこんなとグダグダと考えていると面倒になって、もう買った方がいいやと。カッコいい市販のイスがたくさんありますからね。
そんな重い腰が最近なぜか急に上がりました。コロナで外出しづらいからでしょうか、気まぐれです。
いつまでもリプロダクトのイスを使うのも何だし、なんかやる気になってきたのでダイニングチェアのDIYに取り掛かった次第です。
設計のプロセス
作り方やカタチをいろいろと考えていた時のスケッチです。
意識しているのは「安定していて頑丈であること」・「背もたれに傾斜をつけること」・「再現性のある加工方法」の3点。
1つ目の頑丈であることは当たり前なのですが、普段使いする上で脚立のようにイスの上に立てるくらいの安定感は欲しいなという希望。
2つ目の背もたれについては、直角の背もたれは作るのは簡単ですが、難易度が下がりすぎてツマラないのと、仕事をする時のイスではないのである程度傾斜をつけて寛げるようにしたかったので。
3つ目は再現性、これは僕自身複雑な加工ができる工具や精度の高い技術は持ってないので、持っているカードの中で制作するという当たり前のこと。「僕がイメージ通りに作れる=マネしようと思えば誰でもできる」と思って書いています。
いろいろ考えて最終的にはこんな感じになりました。冂の字型の箱に斜めの板が刺さっているようなイメージです。
これのテーマは「サブロク板1枚から2脚つくる」こと。
これは経済的にあんまり材料費をかけたくないというのと、角材を組み合わせる作り方だとどうしても補強部材や金具がたくさん出てくるので、あまりにも「手作り感」が出てしまう気がして。
斜めの板が、背もたれの機能と冂の字型の開き止めの構造の2つの役割を果たしています。
各寸法は一般的なイスを基準に、サブロク1枚(1820mm × 910mm)から取れるように決めています。
イメージができたら具体的な図面を書いて寸法を拾います。
材料はシナランバーコアという合板を設定しました。これはファルカタの集成材の両側に薄いシナベニヤ貼り合わせた合板で、パイン集成材や無垢板に比べて軽く、強度も十分にある素材。
各所の寸法は、座面の高さが450mmになるように決めた側板の高さ「432mm」が基準になります。これは450mmから座面の厚み18mmを引いた数字。
イスの幅も432mmに合わせました。これは材料を切り出す際に、カットの工数を減らしできるだけ1発で切った方が精度が保てるため。
座面の奥行き「370mm」は一般的なイスを比べると浅めですが、深く腰掛けても膝裏が圧迫されず負荷がかかりません。
大事なパーツになる背もたれの部分は、座面と側板を切った残りの寸法。図面では「700内外」と書いていますが「だいたい700mm」という意味。カットする工具の刃の厚みで多少前後しますが大きな影響はありません。ちなみに今回はホームセンターのカットで、刃厚が3mmだったので実際には704mmになりました。
背もたれの角度は110度。「HQLデータベースサイト」という人間工学や生活特性をまとめたサイトに丁度良い角度と書いてあったので参照して見ました。
結局準備が一番大事
いつも通りホームセンターで事前にカットしてもらました。写真の上のほうにある棒材は端材で今回は不要になります。
組み立てやカットの前に材料に線引きをしますが、今回のDIYにおいてこの作業が何よりも大切。
角度をつけて接合するので、ガイドの線を図面通りに引くことが精度に直結します。
背もたれの板が座面に引っかかる部分の切り欠きをするための線引きです。
傾斜になるため、ウラとオモテで違う長さになり、小口でウラオモテを繋ぐように線引きをします。
切り欠いた背もたれの板が来る位置を、側板に記します。
正しい位置に線を引くための手順をGIFにしました。
まず頂点を1点、板の角から位置を出します。そこから板の角に向けて線を引き、その線から18mm平行にずらした線を引くと、墨出しが完了します。
この線引きはイスの内側になる面に入れています。組み立て時にビスを打つガイドになるように、この面から下穴を開けるための線引きもしておきます。
向かい合わせになるように、反転した線引きをした板を2セット用意します。
これで線引きは完了。
丸ノコと手ノコを使って板を切る
まず背もたれの切り欠きのカットから。
長さが短いウラ側の面を見ながら、丸ノコを使って直線の切れ込みを入れます。
ひっくり返すとオモテ側の面は切れ込みの長さが足りていないので、斜めにノコギリを入れて調整します。
両側から切れ込みを入れた後に小口から斜めにノコギリを入れると
部分的に斜めな切り欠きができます。さほど難しくありません。
背もたれの両側で同じように加工すると、カットの工程は終わり。
インパクトでガンガン組み立てる
カットが終わったら早速組み立てに。
まず準備として、側板に線引きした時に記した位置に下穴を開けます。
細いピットのドリルで貫通させ、裏返すと斜めに穴のラインができます。
次に貫通させた下穴をガイドにして、ダボ埋め用の穴を開けます。
丁度良い深さでドリルが止まってくれるダボ用のドリルピットがめちゃ便利。今回から使い始めたけど、もっと早く買えばよかった。
深く掘りすぎることを気にせずに、ガンガンダボ穴を開けられる。
勢いで座面の天板にも5cm間隔でダボ穴を開けました。
下穴の準備ができたら、コーナークランプを使って座面と側板をロックします。
こういう接合の時にはこの道具は大正義。板の向きを間違えないように注意してロックします。
40mmのビスでガンガン留めていきますが、小口へのビス打ちなので割れたりしないようにちゃんと下穴を通してから。
冂の字になるように、両側を留めたら座面は完成。
切り欠きを入れた背もたれの板を差し込むとダボ穴のラインと綺麗に揃います。
内側からも線引きにきちんと乗っかっているかを確認。下穴はすでに開けているので、一気にビス留めします。
大まかな組み立てはこれで終わり。合板のエッジはかなり鋭利なのでドレッサーやヤスリでゴリゴリ削っていきます。
ちなみにシナランバーコアの芯材になっているファルカタは柔らかく軽い木材なので、フワフワした木屑がエグい量発生します。ヤスリの後はしっかりと布で拭き取ったり掃除機で吸ったりして木屑を払いましょう。
面取りができたら、ダボでビス隠しを。
座りながらイスを引いたり、持ち上げる時に指をかけたりできるように、座面のウラにハンドルをつけました。
組み立てが終わりました。とてもシンプルなカタチ。
仕上げ作業、塗装とか
オイル塗装で仕上げとします。
いつも脳死でナチュラル色を選んでしまいます。濃い色を広い面に塗る勇気が出ません。
表面のシナは塗装をしてもパッと見の印象は大きく変わりませんが、合板の小口部分やダボの部分は少しオイルで色が濃くなり、良い感じのアクセントに。
塗装が終わりました。斜めのダボのラインが可愛くてお気に入りポイント。
板が斜めに取り合う部分の隙間が気になります。物が挟まりそう。
ホームセンターにあるヒノキの三角棒を用意しました。
本体よりも少し濃い色のオイル塗装をして、隙間を塞ぐように両面テープで貼り付けました。これで完成。
まとめ
出来上がりました。
こう見ると、斜めの板がぶっ刺さっているのがよくわかります。側板の繋ぎとしてもよく効いていて、なかなかにガッシリしています。
お気に入りのリサラーソンのチェアパッドを置いて見ました。イスがナチュラル色なのでよく映えてくれます。
座面にもピッタリ。奥行きの370mmという寸法は実はこのチェアパッドの大きさから決めました。
ダイニングテーブルに配置したらこんな感じ。シンプルな構成ながら、イメージ通りに作ることができました。
材料費も2脚で合板1枚の5000円ほど、無駄もなく必要最低限の部材と加工でできたと思います。うまい具合にこだわりと割り切りのバランスが取れた製作ができました。
合板から作るダイニングチェア DIY加工図(159KB)
図面のPDFはここからダウンロードできます。
これでようやく主要な家具を自分で作りきました。次は何を作ろうか。
関連:最初のDIYはダイニングテーブルでした
今の家で最初に作ったのはダイニングテーブルでした。賃貸だけど、壁から伸びたような造り付けのテーブル。